EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。

今月のEBM、ナウ(1)

HLA mismatch移植
(文献
Ichinohe T. et al. Blood. 2004;104:3821-3828

HLA (Human leukocyte antigen)の型が一致すれば移植出来るというのが造血細胞移植の常識です。ところが、この常識をくつがえす報告が日本から世界へ発信されました。

 鹿市医報の平成15年9月号『移植のなぜ(5)HLA一致ドナーが必要?』通巻499号、25ペ-ジに紹介したようにHLA mismatchドナーからの造血細胞移植は日本が世界をリードする領域です。その理論は母親からの組織抗原がお互いに存在するから移植できる(NIMAs; noninherited maternal antigens)というものです。進行期血液悪性疾患35例への移植成績が12月号Blood に掲載されました。

移植の適応基準を紹介します。まず、
 1.進行期の白血病または悪性リンパ腫。
 2.母子間、子母間そして兄弟間移植。つまり、ドナーは母親を共有する事。
 3.免疫抑制剤はタクロリムスを使用する。
以上の3項目です。

 気になる移植後のGVHD (Graft versus host disease) は56%にみられました。重症GVHDは22%。35例の3年での生存率は38%です。移植後day30に寛解生存確認できた29例に限ると3年EFS(Event Free Survival,再発無くいかなる原因の死亡もない生存率)は47%。平均観察期間が20ヶ月で14例が無病にて生存ですからかなり期待出来ます。さらに、進行期といえども移植時寛解であれば62%という高い生存率が期待出来ます。(図1A:全生存率、B:移植時病期の比較) 
現在、伸び悩むバンクドナー数を補い、かつ家族で助けあえる選択肢の一つと考えられます。